BAU
京都在住の写真家に、鈴木崇さんという方がいる。
大学在学中、師事していた立花常雄先生からご紹介いただき、鈴木さんとコンタクトを取ることができた。
神戸大学の前川修教授が受け持たれている芸術学の授業内で、ゲストとして鈴木さんを招くことがあったのだが、ちょうど私がメールをお送りしたタイミングが良かったらしく、こそっと聴講させていただけることになった。
鈴木さんのこれまでの作家活動やドイツ(デュッセルドルフ)への留学の話に加え、ベッヒャー派と呼ばれる写真家やその作品の話など、内容はまさに私の聞きたいことばかりであった。
(その頃私はドイツへの留学を検討していたが、金銭的な問題から断念した。)
授業後、前川先生のゼミ室で作品(卒業制作のプロトタイプのようなもの)を見ていただき、いろんなことを話した。作品について掘り下げていく中で、感情的になってしまう場面があり、鈴木さんにはご迷惑をおかけし非常に申し訳無かった。
ちなみに私は鈴木さんの「BAU」という作品が好きで好きで仕方ない。
「BAU」はバウハウスのバウ。そのまま「建築」という意味だが(Bauはゲルマン語の古い言葉で、Architekturはラテン語由来の外来語らしい)、このチープなオブジェクト=市販のスポンジの組み合わせがこんなにもかっこよくなるものかと、感動せずにはいられなかった。
『これからの写真』展において、畠山直哉氏の「Blast」シリーズの横に展開されていたのも興味深い。
これからの写真:キュレーターズノート|美術館・アート情報 artscape
控えめなサイズでプリントされた大量の写真が壁に整然と並ぶ様は、この仕事に対する受け手の知覚を試されている気がして、その刺激が大変気持ち良い。
また、「BAU」の写真集は500ページにもおよび、サイズは130×100×35mm、重量は450gある。写真のサイズは展示されているものとほぼ同寸だ。
手に取ると、手に収まるが故にそれそのものの「もの感」を意識させられる。写真に興味がなくともつい手に取りたくなる、良い装丁だと思う。